フランスや韓国など海外で猛威を振るう「トコジラミ(南京虫)」。最近ではその被害について各メディアが連日のように報じています。
日本においても対岸の火事ではなく、東京や大阪などの都市圏を中心として発生の広がりを見せています。
- 刺されると眠れなくなるほどのかゆみ
- 強烈なかゆみが1週間以上続く
- 家に住み着くと猛烈な勢いで繁殖する
特徴を列挙するだけで、そのヤバさがわかる「トコジラミ」を手軽に予防する方法はあるのでしょうか?
当記事ではトコジラミが嫌う匂いをテーマに、予防対策として有効な虫除け成分「ディート」について解説します。
旅行や出張が多い人は特に注意してトコジラミ対策をおこなってください。
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ヤバい吸血生物!トコジラミとは
かつては、あまり耳にすることのなかった害虫「トコジラミ」ですが、2010年代以降は日本でも発生が広がっており、全国の自治体で警戒が呼びかけられています。
このトコジラミの拡大は海外からの旅行者や貨物輸送が増加し、その衣服や荷物に付着したものが繁殖した結果だと考えられています。
トコジラミはどこにいる?
トコジラミは小さく平たい体をしており、成虫のサイズは約5〜8mmほど。
海外ではBed-bugs(ベッドバグ)と呼ばれており、その名の通り寝具に潜んでいることが多い害虫です。
光を嫌うため普段はベッドの裏側や隙間などに隠れていますが、夜になると人間の血液を吸うために活動を開始します。
彼らは人間の衣類や荷物などを介して移動するため、不特定多数が利用するホテルや病院、公共交通機関、アパートなどが特に注意すべき場所となります。
トコジラミに刺されると猛烈なかゆみが
トコジラミが恐れられる理由は「猛烈なかゆみ」の症状にあります。
トコジラミは吸血する際に血液凝固を防ぐための唾液を宿主に注入します。この唾液によるアレルギー反応によって強烈なかゆみが発症するのです。
かゆみは1週間以上も続き、睡眠障害などの原因となることも。
単なる害虫ではなく、心理的なストレスや不安を引き起こす恐ろしい生物だと言えるでしょう。
トコジラミは予防対策が重要
トコジラミは駆除の難易度が高く、対処が遅れると素人では対処しきれない場合がほとんどです。
そのためトコジラミが大量発生する前に「予防対策」を講じることが最も重要です。
トコジラミの主な予防対策は以下の3点です。
- トコジラミを寄せ付けない
- トコジラミを持ち帰らない
- トコジラミを早期駆除する
ホテル・旅館に宿泊した際には、衣服や荷物にトコジラミが付着していないかチェックするようにしましょう。
トコジラミを持ち帰って自宅に侵入させないよう注意してください。
不安な場合は持ち帰った衣服を熱湯で洗うかスチームアイロンを使うのがおすすめです。
トコジラミは熱に弱く早期の駆除に有効な手段となります。
寝室まわりは熱処理ができるふとんクリーナーを活用するのも良いでしょう。
トコジラミが嫌う匂い!初期予防は「ディート」で
トコジラミに刺されないためには、トコジラミを人体に寄せ付けないようにすることが必要ですが、その際に活用してほしいのが「虫除けスプレー」です。
「なんか普通…」と思うかもしれませんが、虫除けスプレーの活用は最も手軽で効果のある初期予防なのです。
トコジラミが嫌う匂い成分はいくつかありますが、その中でもディート(DEET)と呼ばれる成分は強い忌避効果を期待することができます。
虫除け成分「ディート」とは
ディート(DEET)は、第二次世界大戦中の軍事要請に応え、1946年に米軍によって開発された虫除け成分です。
これは熱帯および亜熱帯地域での戦闘中に蚊が媒介するマラリアなどの病気から兵士を保護する目的で作られました。
1957年には民間での使用が認められ、その後は高い効果と安全性、そして低コストである要因もあって、世界中で広く普及しました。
最近ではトコジラミにも有効であることから注目を浴びている成分です。
最強の虫除け成分「ディート」の特徴
ディートは独特の匂いがあり、トコジラミを含む様々な害虫に対しての忌避効果が確認されています。
- 独特の匂いがある
- 様々な害虫の忌避効果がある
- トコジラミの忌避効果も期待できる
トコジラミに対するディートの効果実験
(一財)日本環境衛生センターの橋本知幸氏による研究実験では、ディートがトコジラミの吸血行動を阻止するという可能性が示唆されています。
この実験では殺虫剤に感受性のある系統と、抵抗性のある系統のトコジラミが使用され、マウスを誘引源として使用しています。
ディートを異なる濃度で溶かした液体をろ紙に塗布。その上にマウスを置くことでトコジラミが吸血するかどうかを観察したところ、ディートを塗布した区域ではトコジラミの吸血率が顕著に低下した結果となりました。
また、殺虫剤に抵抗力を持つトコジラミと持たないトコジラミの両方で効果が確認されています。
供試虫A群 | 供試虫B群 | |
---|---|---|
対照区吸血率 | 58.6% | 86.8% |
処理区吸血率 | 2.1% | 17.7% |
Journal of Economic Entomology誌に掲載された研究実験でも同様に、トコジラミがディートを忌避する結果となっています。
これらの実験からもトコジラミがディートの匂いを嫌い、吸血行動の阻止に一定の効果があることがわかります。
ディート30%配合の虫除けスプレーがおすすめ
かつては虫除けスプレーに配合されるディートの成分濃度は12%以下でしたが、2016年に厚生労働省が濃度を高めることを承認したことで、ディート30%配合の虫除けスプレーが製造販売されるようになりました。
濃度10%の製品が3時間程度の効果であるのに比べて、濃度30%の製品は6〜8時間ほど効果が続きます。
日本人の平均睡眠時間は約7.3時間と言われているので、トコジラミ対策には長時間効果が持続する虫除けスプレーがおすすめです。
販売されている濃度30%の製品は、まだ種類も少なくドラッグストアなどでの取り扱い店舗も少ないようです。そのため、オンラインショッピングで購入しておくことをおすすめします。
フマキラー|スキンベープミストプレミアム
虫よけ成分〈ディート〉30%配合で、虫よけ効果が5~8時間持続します。
池田模範堂|ムヒの虫よけムシペールPS30
パウダー配合なので、汗に強い虫よけ剤です。
ディート配合の虫除けスプレーの注意点
ディート配合製品はトコジラミに対して高い忌避効果を発揮するメリットがある一方で、使用できる年齢や使用回数の制限があるので注意が必要です。
特にディートが高濃度で配合されている製品は12歳未満の子供には使用しないようにしてください。
またディートはプラスチックやポリウレタン、レーヨン、皮革などを腐食させる性質があるため、服や寝具、家具に直接噴霧しないようにしましょう。
ディートとイカリジン効果はどちらが優れている?
虫除けスプレーのパッケージをみると「ディート配合」「イカリジン配合」というように2種類のタイプがあることがわかります。
どちらの成分が優れているというわけでなく、それぞれに特徴があるため、状況にあわせて使い分けるのがよいでしょう。
- ディート
-
- 対策できる害虫の種類が多い
- トコジラミに効果がある
- 使用できる年齢制限がある(濃度30%以上は12歳から)
- イカリジン
-
- 使用できる年齢制限がない
- 対策できる害虫の種類が少ない
- トコジラミへの効果は薄い
海外のトコジラミの忌避効果の実験で、ディートとイカリジンの比較がされています。
この実験では「忌避しなかった」トコジラミの数がカウントされており、イカリジンが84匹だったのに対して、ディートはわずか7匹。
ほとんどのトコジラミがディートを避けたという結果となっています。
効き目ではディートがダントツです。
ディート以外のトコジラミが嫌いな匂いは?
ディート以外にもトコジラミが嫌いな匂いはいくつかあります。
安心して使いたいという人には天然成分の忌避剤を選ぶとよいでしょう。
前項で紹介した実験にもあるシナモンオイルの匂いはトコジラミが忌避したという結果がでています。
他にも公益社団法人 日本アロマ環境協会が「オレガノ精油の匂いがトコジラミを忌避できる」という興味深い実験結果を公表しています。
- シナモンオイル
- オレガノ精油
- 樟脳
- ラベンダーオイル
- ブラッドオレンジオイル
- レモン
- シナモン
トコジラミの予防は複数対策で
ディート配合の虫除けスプレーはトコジラミの吸血行動阻止に一定の効果があるものの、すべてを防げる訳ではありません。
そのため他の予防対策も並行して実施することが重要となります。
トコジラミの駆除は専門業者に依頼
もしすでにトコジラミが発生し、被害に悩んでいるのならば、すぐに専門の業者に依頼するようにしてください。
繁殖力が強いトコジラミは一匹いたら要注意です。
被害を拡大させないためにも早期に対応することが重要となりますので、プロに相談してみてください。
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この記事を書いた人
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